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2016年7月30日土曜日

❖6月学習会報告

第22回よしかわ憲法サロン 6月学習会内容報告

                                         
日時/場所/参加者:  2016/6/18 (土)13:30 ~ 16:00/おあしす/22名
学習会内容: 1) 「自民党の改憲草案を考える」 その②
講師: 清川 久基さん

[説明内容要旨]
   清川さんは以下の条文を選び、自民党改憲草案の問題点について説明された。(参加者の意見も記載)
日本国 現行憲法
自民党 日本国憲法改正草案
第三章 国民の権利及び義務
第12条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持しなければならない。
国民は・・・常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。
第三章 国民の権利及び義務
第12条 (国民の責務)
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。
国民は・・・自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。
第13条
全て国民は個人として尊重される。・・・国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重を必要とする。
第13条(人としての尊重等)
全て国民は人として尊重される。・・・国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、最大限に尊重されなければならない。
  
・第12条:“国民の責務”というタイトルを使い、国民をしばろうとしている。立憲主義(為政者をしばる考え)と逆さま。国民に保障する自由及び権利は、公共の福祉のために利用するのではなく、公益、公の秩序の範囲を守れと言っている。体制維持を主張している。
   個人 → 個性、考えを持っている。人間として生きる権利を持っている。”みんな違って、 みんないい”
   人   → 生物上の分類、最大公約数的な表現。権利が守られていないように感じる。
   樋口陽一氏の意見:「すべての国民が“個人”として尊重されるということが憲法の要
 なのです。」
   改憲案の世界観・人間観・価値観:「現行憲法の個人の尊重こそが個人主義を助長させた。この弊害 からの脱却こそが最大の課題」

 思想及び良心の自由
第19条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第19条 (思想及び良心の自由)
思想及び良心の自由は、保障する。
第20条 3
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第20条 3
国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りではない。
 ・第19条:改憲草案では、国が国民に保障(与える)。現憲法では、国民の良心の自由を誰も(国も)   侵してはならないと言っている。
 ・「日の丸・君が代」裁判で、裁判所は、思想・良心には核心部分と非核心部分があり、後者は尊重さ   れなくとも良いという判断をした。“君が代の伴奏をしたくない”という思想は、非核心部分に当る
   として、制約されてもやむを得ないと判断した。欧州では、思想は表現されて初めて意味を持つも   ので、思想・良心の自由という概念ではなく表現の自由となっている。
 ・第20条 3:改憲草案の“ただし”以下の挿入文は、靖国神社参拝の合法化を意図している。


衆議院の解散権問題
第3条
天皇の国事に関する全ての行為には内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負う。
第6条 (天皇の国事行為等)
天皇の国事に関する全ての行為には内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。
第7条
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行う。
3 衆議院を解散すること
第69条
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
 

・衆議院の解散権を総理大臣が持つのは、現憲法69条に定められ、衆議院で信任されなかった場合に   解散できることになっている。しかし、現状は、現憲法の第7条から自由にできると解釈されている。
   改憲草案第6条で、総理大臣が解散権を持つことが可能と解釈できるものになっている。大きな問題。
 ・現憲法の第7条で総理大臣が衆議院を解散できると解釈できるとすると、憲法の改正も総理大臣の   進言でできることになってしまう。

 家族とは
第24条
第1項
第2項
第24条 (家族、婚姻等に関する基本原則)
家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は互いに助け合わなければならない。
第2項
第3項
 ・第24条は婚姻、財産権、相続、住居の選定等について規定された条文。現憲法の第1項、第2項が、   改憲草案の第2項、第3項になり、改憲草案では、上記条文が追加された。
 ・自民党の解説: 家族は、社会の極めて重要な存在ですが、昨今、家族のきずなが薄くなってきて   いると言われています。これに鑑みて、24条に家族の規定を新設しました。世界人権宣言16条3項を参考にしました。
 ・人権宣言:家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。・・・・自民党の解説文と世界人権宣言の内容は同じではない。

 最高裁判所の役割
第77条 2
検察官は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
第77条 2 (最高裁判所の規則制定権)
検察官、弁護士その他の裁判に関わる者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
第81条
最高裁判所は一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
第81条
最高裁判所は一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する最終的な上訴審裁判所である。
第98条
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
第101条
現憲法の第98条と同じ。
 ・第77条 2項: 最高裁判所の定める規則に従う者に“弁護士その他の裁判に関わる者”が加わる   ことにより、司法の世界が最高裁判所のコントロール下に置かれる。
 ・第81条、101条: この条文の意味は現憲法と同じ。最高裁判所は、法律、命令、規則、処分が憲   法に適合するか否かを決定する所と言っている。しかし、現実には憲法判断を避けている場合がある。「統治行為論」

[清川さんと参加者皆さんとの討議]
 ・統治行為論:「政治性の高い国家統治の基本に関する行為は裁判所の審査権の外にある」という考え。
  1960年の衆議院解散、1959年砂川事件の合憲、違憲かの裁判に対し、最高裁は統治行為論を根拠に  憲法判断を回避した。 これは、憲法81条に違反しているのではないか。
 ・「現行憲法第7条から、総理大臣が衆議院解散をできるなら、同様に憲法の改正も総理大臣の独断でできてしまう」という考えに対し、憲法改正はそんなに簡単にはできない(第96条があるから)という考え(意見)がありました。

[感想]
  今回の清川さんの学習会を聞いて、自民党の改憲草案に対し以下の危惧及び感想を持ちました。
  1) 現憲法の国民主権や基本的人権を抑えようとしている。
  2) 国民は国のためにある存在という考えを主張しているように見える。
  3) 現日本国憲法にある理想、希望が感じられない。
  以下の夏目漱石の言葉を思い浮かべました。
  「理想を高くせよ、敢て野心を大ならしめよとは言わず、理想なき者の言語動作を見よ、醜陋(しゅうろう)の極なり、理想なき者の挙止容儀を観よ、美なる所なし、理想は見識より出づ」
以上。